あらすじ
吉田秋生
1985-1994年
別冊少女コミック / 小学館
全19巻
謎の合成麻薬「バナナフィッシュ」。マフィアのボスディノ・ゴルツィネの男娼からストリートギャングのボスに成り上がったアッシュ・リンクスは、偶然この麻薬のサンプルを手に入れたことにより、ベトナムで何故兄であるグリフィンが発狂したかを知ることになる。
同じ頃、ストリートギャングを取材に来た繊細な心を持つカメラマン助手の日本人、奥村英二と出会い、共に「バナナフィッシュ」の謎を追ううちに、「バナナフィッシュ」とは政府と軍上層部が中心となり極秘裏に開発したアルカロイド系の合成薬剤で、投与することによりまったく無関係な人間を戦闘員、暗殺者に仕立て上げてしまう恐るべき“兵器”であることがわかる。図らずも触れてはならない裏の機密事項に関わってしまったことで、マフィア、国家、軍産複合体が複雑に絡み合う野望の渦に巻き込まれてゆく。
アッシュはストリートギャングの仲間を戦いで失いながらも、兄と仲間たちの仇を討つために、黒幕の正体を暴こうと巨大な敵に挑んでゆく。
くつ王

ま、80年代と言ったらコレとAKIRAでしょう。
前回レビューした『ジョジョの奇妙な冒険』の第1部が今読んでも十分面白いのに比べ、『バナナフィッシュ』はさすがに今読むと古くさい感じがする。というか正直ハマっていけなかった。
これはもはや面白いかどうかという問題ではなく、「漫画の古典として必ず読んでおかないといけない」という類のものだと思う。
アメリカを舞台としていながらディテールにこだわりまくってて妙にリアルで、バイオレンス、ボーイズラブ、児童虐待、ドラッグカルチャー、そういったタブーとされてきたものを臆面も無く中央に配置し、かつ読ませる物語として機能させているという奇跡のような作品。
つーか、絵が淡白だからまだアレだけど、主人公が容赦なく敵を殺しまくる様は圧巻であり、これはおそらく当時の漫画界では相当衝撃だったんじゃなかろうか。
「うわー主人公なのに慈悲のカケラもなく殺しまくってる・・・かっこいいぜ・・・」って感じだったんだろう。
後の漫画家たちにも与えた影響は計り知れないと思います。
ただ、今読むとちょっと・・・。
全体的に80年代の雰囲気が恥ずかしい・・・。
今「ふぞろいの林檎たち」を見て恥ずかしくなる感じと同じです。
あと同性愛を描いてるけど、今のよしながふみみたいに洗練されてないというか、ストレートでちょっとキツいっす。
今岡秀雄

鼻毛を抜かれたってどういうことなんだ。
美しい魔物は鼻毛を抜かねえ…
そう思う今岡秀雄42歳厄年です。
という、古い言葉繰りが非常に気になるものの、全体的には面白かったと思います。
でも、これ、小説にした方がいい。
そりゃもちろん若い人にとって敷居が下がるって意味はあるかも知れんが、なんていうかなあ、漫画の特性を使ってない感じ?
話は抜群に面白いと思う、でもなんかさ、微妙なニュアンスが掴めないっていうか。
信条や考え方、思考論理なんかが前に出てきてるわりに説明できてないっていうか。
文章にしたらメッチャ面白いんじゃねえかなって思いながら読んでた俺。
もう42歳の俺。
まあニュアンスっていう意味だと舞台となってるアメリカの文化とかが興味深い場面がたくさんありましたねえ。
マスコミのくだりでウォーターゲート事件が出てくるあたりとか、人種関連の話とか、それってアメリカの人の微妙な感覚があるだろうから、よく取材されてるなあと。
ていうか作者は白人男性と付き合ってたんじゃないのかと。
あとさあ、同性愛出しすぎ。
この人とよしながふみはね…ホントいつもね…
そういうもんなんでしょうか。
と、ガチャガチャ書きましたが、総評しましょうかね。
えー、前半は面白いけど、後半がつまんねえっていうか納得いかねえ!
銃撃戦とか、しかも頭脳勝負のやつさ、もっと面白くなりそうなんだけど、なんかなあ、自分が触れた事ない分野だからか、魅力がないんよね…
具体的に言うと、これは全体通じてなんだけど、アッシュの頭のよさとか、他の人のそれぞれの能力とか、あんま強く伝わってこないんよね。キャラが弱い。
絵の力か…とも思うけどねえ。
漫画でよくあるのはさ、例えば凄い能力の人がいたとして、その凄い人のことを、周りの人が「凄い凄い、あいつはここが凄い」って説明することでこっちが認識するって手段なんだけれども。
それはもう、存分にやってるんだけど、実際なにが凄いのかよう伝わらんままだから乗れない。
銃撃戦も何が凄いのかよう分からん。
見せ方の問題な。きっと。
あとエイジ君とアッシュの関係も伝わらん。
俺の経験の浅さが悪いかもだけど、何かねえ。
アッシュとかの重たい人生経験が遠い世界の事すぎてイマイチ伝わらないのもその要因か。
とまあ、舞台とアメリカにした良さと悪さが見えてそういう意味では面白かったかな。
たろう

ずっと気になっていたマンガでした。
ずっと、というのはおそらくは中学生頃から。
少女マンガに連載している、少女マンガらしくない
男が読んで面白いマンガ、という話をずっと聞いていて、
いつか読みたいなぁと思っていました。
今回初めて読破して、確かに面白かったです。
劇画調、というのでしょうか、
シーンの盛り上げ方や間の取り方は映画をみているような感じで
ドキドキして続きが気になる。
ただ、これはやはり少女マンガでしたね。
男の友情、というよりは同姓の愛情でしたし。
(それはそれでいいんでしょうけど)
純粋な心で友を求める、というテーマだったと思うけど
友情というよりは愛なんだなぁと。
減点の理由は、
メインのキャラ以外の人の顔が似ていて混乱してしまったことと、
後半部分は、謎もなくなっていて、ストーリーとして冗長だなと思ったからです。
貴族

やっとこの有名なBANANA FISHを読みました。
名前は昔からずっと聞いてたのでいつか読みたいと思ってたんです。
感想としてはおもしろかった。昔の漫画としては。って言うのが付け加えられるけど。
話としては王道だよね。一人のカリスマがいて、そのカリスマが全幅の信頼を寄せる一見価値のない親友がいて。(そして読者は自分をその親友に投影して読んでいく)
そして敵がいて謎があり、話が大きく飲み込まれていく。
最初はBANANA FISHってなんだー?と引き込まれていったけど、後半はBANANA FISHの謎が薄れて抗争がメインになったのと、最後の締めがあれで残念だった。
けど政治的な話も絡めてうまいことまとまってたと思います。
月龍は小物だったねー。
でもいつかアッシュが刑務所に捕らえられたとき刑務官から嫌みを言われてたけど、
ほんと部外者から見たらただの大量殺人犯だよね。そしてそれは仕方ないことだったのだ、と自分で思い悩みながらも正当化している。
僕の好きな書に同じように大量殺人を犯しながら正当化している人の話が��ってて、
それを例に挙げながら人を非難するのではなく、どうしてこういうことに至ったか理解するように努めよう。
その方が理解、寛容、好意が生まれその人と通じ合えて得策だよ。って書いてある。
あぁなるほど、視点を変えればどんな人にも物語があるんだってこのBANANA FISHがその書を理解する手助けになった。
頼む
面白い。
「バナナフィッシュ」をめぐる戦いが、いつのまにかアッシュをめぐる戦いにシフトしていくけど、アッシュをほしいと思う思惑が全員違うっていうのが面白い。
これはたぶん、リアルタイムで読んでたらすごい興奮しただろうと思う。今は「王道」になっている面白いマンガの要素の、その原型がここにたくさんある。
図抜けたカリスマ性を持つ若きリーダーに、幼少期の虐待のトラウマ。政治世界で活躍するヒーローにはアブノーマルな性趣味。財力と兵力に長けた者に、唯一もたらされない愛と救い。
そして、ついに愛に手をつかんだと思うや否や、あっけない死による幕切れ、死に顔は笑顔。アッシュがラオに刺されて死んでいくシーンは、ドラマ「振り返れば奴がいる」で、織田裕二が西村雅彦に刺されるところを思い出したよね。
点数は、「七夕の国」が8点に届かないと判断して、7点。
どうでもいいけど、髭の刑事と、ディノの手下の顔がおんなじだよね。あと、絵がすごい変わったよね最初と最後で。成長期かと。
