漫画レビューサイト:MANGAHEAD(マンガヘッド)CROSS REVIEW 七夕の国

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更新日 2009-04-19 | 作成日 2008-03-06

あらすじ

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岩明均 著
週刊ビッグコミックスピリッツ / 小学館
1996年-1999年
全4巻

大学サークル「新技能研究会」部長である南丸は、「あらゆるものに穴を空ける」というあまり役に立たない超能力を持っている。彼の祖父も同じ能力を有していた。
ある時、彼の大学の教授、丸神正美も似たような能力を持っていた事がわかる。それも、南丸の空けるアイスピックで刺したような小さなものではなく、卵ぐらいの大きさの穴がえぐりとられた様々なものが残されていた。
南丸家と丸神家のルーツである「丸神の里」と呼ばれている丸川町にて、不可思議な殺人事件が起きる。報道によれば、被害者の死体は、頭部の半分がまるで巨大なスプーンですくいとったように滑らかにえぐり取られていたという。自分の能力や失踪した丸神教授に関係があるのか、南丸はゼミのグループと共に、調査のため丸神の里へと向かう。

くつ王

岩明作品の金字塔

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クロスレビュー1本目ということで、まずは僕のフェイバリット作品から。

寄生獣を描き上げた岩明均の次の作品に当たる本作だが、寄生獣があまりに素晴らしい傑作すぎた(ここに異論を挟むヒトはいないだろう)ために、本作はやや過小評価されているのではないかと思う。
たしかに寄生獣にあったようなスリリングな展開はなく、ほとんど全編にわたってのんびりとした雰囲気で話が進んで行く。
前半はとくに退屈と言うヒトも多いだろう。
しかし地方の歴史にからめた物語は実に味わい深く(タイトルの本当の意味を知るには終盤まで待たなければならないが、それ以前に、実に美しいタイトルじゃないか)登場人物も皆個性豊かであり、主人公の穏やかな性格にも好感が持てる。
前半はよく分からない超能力と丸神の里の話が繋がらないので退屈な印象を受けるが、後半の丸神の里の謎がだんだんと解けていく過程は他の漫画の追随を許さないカタルシスがある。
まさに歴史オタクとしての岩明均と、ストーリーテラーとしての岩明均の奇跡的な邂逅と言える。

また、「七夕の国」では「寄生獣」以前の「風子のいる店」「骨の音」といった作品から続く「人間賛歌」というテーマが完結を見ている、ということを指摘しておきたい。
岩明均は、この作品まで一貫して苦悩する人々を描いてきたが、これ以降は「歴史漫画の人」になっていくため一人の人間の内面にフォーカスすることが極端に減っていく。
しかし、この作品で幸子が救われる過程は、彼の作品の中でも最も素晴らしいものの一つであり、岩明均の中でもこのテーマについての一つの結論が出たのかもしれない。

いろんな意味で「七夕の国」は「寄生獣以前」と「歴史漫画シリーズ」の橋渡し的な立ち位置にある漫画と言える。
つまりその「過渡期」とも言える部分がいまひとつ評価に繋がっていない理由の一つなんじゃないかと思うが、僕にとってはそこが最大の魅力と言える。
僕は岩明作品の中で圧倒的に一番好きです。
最後のシーンなんかもうホントに最高じゃないですか。

今岡秀雄

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もう設定が抜群に素晴らしい。
考えてもみてほしい。ファンタジーを交えつつ、こんな史実を作り出せる人間がどこにいよう。
そこには時間の深みとそこにいた多くの人々の意志を感じる。
そこにきてノーブラ幸子。なんというエッセンスだろう。ヒロインがノーブラなのである(背中の傷を見せる時に判明)。ノーブラに白いTシャツ1枚。淡白な絵のせいで乳首が浮く描写は回避されているが、井上雄彦なら微妙な突起の陰影を書き込むだろう。ToLoveるの作者なら色まで付けるだろう。しかし漫画には省略の芸術がある。俺たちはその省略部分を無意識に補完する。乳首補完計画発足である。

きっと補完してみせる。
ホカホカのチンチンをお見舞いしてみせる…

来週


7.png来週です。
「寄生獣」以来、この作者の作品を読みました。
主人公がまたもや、無垢な正義溢れる性格で。
不自然なほどに穏やかだ〜。
考え方が自分の幼き頃にそっくりで
あーやっぱり歳を取るとどんどん汚れてくるのねーと。
例えばこの世の生き物すべてが星になってしまったら
溢れてしまうやん、とか。もう果てしなくつまらないことばかり考えてました。
それから、この作品に登場する「丸神山」が小学校のとき遠足で登った
切株山にそっくりで、読んでる途中かぶってかぶってしょうがなかったです。
切株山にもまつわる民話があって、そののんびりさとアホっぽさからは
かなり遠い壮大なお話で3巻からは一気読みでした。
主人公が考える能力の有効利用については、この世にはびこる
巧妙な詐欺なんかも同じように有効利用できたら良いなぁ、などと
ストーリーと違うことばかりを考えてしまった。
最後に一つ、切り取られた物や人はどこへ行ってしまうのか
気になって気になって。
少しだけ恋愛のお話が書かれてるのは女の子にとって◎です。
点数は、七夕だけに7点。

貴族


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丸神の里にのみ遥か昔から存在する、異形の者、「手が届く」という超能力、「窓の外」というイメージ、これは何なのかを解き明かしていくお話。
話がうまいです。最初は断片的すぎて読者はよくわからないけど、きれいに話が進んで行く。
伏線を徐々に拾って行きながら最後にきっちり集約されてカタルシスが得られるという。
話のまとまりにはすごいぐっと来たんだけど、ファンタジーと歴史を最後に「講義」という形で「推量」としてタネ明かしをするのがもうひとつだったかな。
まぁ作者が作った歴史的事実を作者が作った登場人物に推量させるのだから100%正解であることは間違いないんですけども。
僕は伏線が後半で見事に収まる漫画と主人公が成長する漫画が好きなんですけど、七夕の国は両方ともありますね。
主人公はのんびり、頼りなくて周りに流されてるんですけど最後は主人公主導で物語は進んで行く。
魅力的で哀しげなヒロインを最後捕まえられてよかったですね。
最終巻の旗の意味が分かるページと最後のページは素晴らしい。
とりあえず最後まで見てみろという作品ですね。

頼む

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まず、ストーリーとしてとても面白い。後半の謎解きを畳み掛けていく感じは尋常じゃなく盛り上った。それだけに、冒頭の、戦のシーンのあと現代に話が飛んでから突然緊張感がなくなって、だらだらと進んでいく中盤が勿体無い。この緊張感の無さは作者が意図したものであることは間違いないけれども、それにしても、だ。全10巻くらいに膨らませて、緊張感のある展開にして、もっと読ませる作品にしようと思えばできたと思うが、なぜそれを避けたのか気になる。
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この作品は、幸子の物語だ。登場人物は窓を開いたか否か、手が届くか否かで4種類に分類できる(付表参照)。この世の闇や、生の内側に横たわる死の恐怖というようなものを知っていて(=窓を開く)、でもそれに抗うための特別な能力を持たない(=手が届かない)者が、その救いを宗教やスーパーナチュラルなもの(=里の掟)ではなく、普通に生きる人(=主人公)の中に見出してゆく。晴れやかな表情のラストシーンはもう、ホント、圧巻の一言。

クロストーク

くつ王 × 貴族 × 頼む × 今岡秀雄 『七夕の国』クロストーク 2008.3.14


七夕の国は寄生獣よりも地味なのか


くつ王 じゃあそろそろ七夕の国の話を・・・

今岡秀雄 おできが出来てたよね

頼む あった

貴族 斬新な始まり方だw

くつ王 まずみんな岩明均の他の作品って読んだことある?寄生獣とか

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今岡秀雄 10回は読んだ

頼む 寄生獣読んだことあるけど記憶にあまり残ってない

貴族 他のも一度切りだけど結構読んだ

くつ王 寄生獣と比べるとやっぱり地味よね

頼む バトルがあるかないかで

貴族 そうだよね。謎はあるけど求心力が弱いよね。これからどうなるんだろう的な

頼む なぞを解き明かす必然性が弱い。危機迫った感じが、事実としてはあるんだけど、キャラクターの描き方がぼかしてる

くつ王 うーん・・・求心力という言葉を使えば「非常に強い」と僕は思うんだけどなあ・・・まあ頼之の暴走から謎が解き明かされて行く感じではあるけど、たしかに必然性は低いのかな

貴族 あの辺りからだよね

頼む ちょっととんでもないことになってきたぞ、と

貴族 軍隊出てくるのがびっくりした。ビルを飲み込んだりして、ぐーっと一気に話が大きくなってきて

オチはあれでいいのか

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今岡秀雄  その前に、能力の誤解してる辺りとか、ググっと来ない?ちょええ〜とか言って穴あけるやつ

貴族 誤解というのは最終的な解釈に対しての、ってこと?

今岡秀雄 空間にディメンションボール(仮)を作る能力を、外で暮らしてるあのナン丸の家計は誤解してすぐ物質に当ててる辺り。時間の深さがあるのよ。そういうのを思いつくあたりが岩明大好き

貴族 本当は「ワープ装置」だったっていうのは当初からの考えだろうけど、宇宙人が突然出てきたのが展開飛ばし過ぎてると思った

くつ王 まあ・・・超能力だからねえ。始めから宇宙人の予定だったんだと思うけど

貴族 宇宙人っぽい姿がでてきて、なんだろうと思わせてやっぱり宇宙人だったのか。ってのが残念

頼む 夢オチに近い感じ?

貴族 あの教授の講義まで宇宙人という発想がちっとも出てきてないのに。10巻くらいまで膨らませて、宇宙人とかワープとかの伏線があれば最高だと思う。主人公が一気に成長しすぎなのも、もう少しエピソードを交えてほしかった

幸子というヒロインについて


くつ王 たしかに4巻だと少し短いかもね。説明が足りないというか駆け足というか。主人公と幸子の関係とかももう少し時間をかけてもいいかな

今岡秀雄 男女の関係は書けない人だと思うよ

くつ王 確かに男女の関係を書くのは苦手なのかな・・・『寄生獣』も淡白だし。『風子のいる店』もそうだし

今岡秀雄 鳥山明と一緒よね

くつ王 でも幸子はすごく魅力的に描かれてたじゃん?

貴族 書かれてたね

くつ王 これは岩明作品では珍しいことだと思うけど
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貴族 お兄さんの死を見て一瞬狂いかける描写はすごいと思った

くつ王 あれいいよね

貴族 おおおおおおって言うのは画力足りないけど、『でも、こいつにね、こいつに、まだ、わたし、言うことが、』とかのしぐさはすごい

頼む おおおお、のところもあれ以上描かれてもきついかも。あれはあれでいいかも。針が振り切れてない感じで。リアルに狂ってる

くつ王 うん。僕も画力どうこうっていうより、ああいう風に描きたかったんじゃないかと思う。すごい印象に残るし

貴族 そっかぁ。『おおお』は気合い入れてるようにしか見えんかった。後半は文句いえないさみしさが出てた

頼む 高志が幸子に謝る(遺言)ところ、どうですか?死に際に。何を謝っているのか
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くつ王 高志ってすごいあっけなく死ぬよね。これでいいのかってくらい

貴族 狂言まわしだからいいんじゃない?能力があって、意思がない、そういう人間の末期、という描き方よね

頼む 僕のレビューの付表でいくと幸子と対極にいる存在。○と×が逆なの

くつ王 うん、そこがあの兄妹のポイントよね。兄は能力があって遊んでて、妹は能力がなくて苦悩しててっていう

頼む 兄妹にその対比をもってくる設定は流石。定石といえば定石かもしれんけど

貴族 あーあんまり思わなかったなぁ。兄妹の絡みが少なかったからかなぁ。ピースとしては必要だからあるけど、その対比に強い意味を持たせてるとは思わなかった

くつ王 でも幸子は兄あっての苦悩よね。だから対比として活きてるんだと思う。虐待の話も含めて

頼む 対比を明確にしてるのね、幸子目線を読者に植え付ける

くつ王 そう、頼むは七夕の国は幸子の物語だと書いてたけど、これは面白いなと思った

頼む そうね。付表でいくと、読者は幸子か「里の人たち」にしかなれないのよ。能力がなくて、闇を知ってるから(闇を知らないひとはもう、無視するとして)

くつ王 確かに幸子が救われないとこの作品は成り立たないんだけど。まあ救われたかどうかは結局分かんないんだよね。もう最後のシーンを見て想像するしかないんだけど

頼む あのシーンの直前に江見先生のところで天の川のくだりが出てくるあたり、作者の意図として、救いのイメージを伝えようとしてるはず。だから救われたのだと思っていいはず

くつ王 そしてあの表情もねこれさ、みんな書いてて面白いなって思ったけど最後のシーンの幸子っていいよね。ホント最高だと思う

今岡秀雄 俺はモヤが晴れた。幸子が向こうに行く時にナン丸が止めようとして凄い喋るじゃない、当たり前のことを

くつ王 うんうん

今岡秀雄 あ〜伝えてくれた〜っていう。ほんで最後に伝わった〜っていう。そういう爽快感すらあった

くつ王 頼之と行かなくてよかったって表情だよね

貴族 世を儚んでた幸子がね
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頼む わざとらしいくらい喋るからね、主人公が。あの辺の絵のタッチは、好みが分かれるところかな

くつ王 もっと情熱的に描いてほしかったってこと?

頼む 情熱的には言ってほしくないけど、困惑の中で言うとしても『おれのゆってることが正しい』のコマのあのデフォルメの仕方は好みが分かれるかな。わざとらしいから。純朴さをアピールしすぎてるというか

カササギについて

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貴族 カササギの話はしなくてよかった?

頼む というと?

貴族 うーんと、あういう謎解きとかストーリーテリングとかはどう感じたかとかいう話

くつ王 よかった。岩明の真骨頂っていうか。まだ戦争は終わってないっていうか

頼む 貴族は謎解きに破綻があると感じている、と?

貴族 いや、よかったよ。読者をおいて行く断片的さが一気に最終巻できれいに実を結ぶの

頼む 徐々にじゃなくて、ね

今岡秀雄 あんなもん徐々に見せられたら分かりにくくなるよ

丸神教授は何を考えているのか?


頼む 丸神教授が、これまでの『掟』とか宗教を否定しながらも、教祖的な位置に落ち着く、彼は何を考えているか?というのは?

くつ王 窓を開いてしまったから・・・って言ってたのが全てなんじゃないかな

今岡秀雄 単純に全て分かってしまったからっていうんじゃない

頼む でも、みんなが信じてる『救い』は幻だ、的な発言も無かった?
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くつ王 宇宙人のせいだと分かって、もう二度と来ないだろうとも思ってて、それでもやっぱり待ってるっていうことなんじゃないかな

頼む 『あまり敬う気にもなれん』のに?

くつ王 里のためでもあるんだろうけど

頼む 今確認したけど、『わたし』も『鎖に繋がれた』と言ってるね

貴族 窓の外とは植え付けられた恐怖心であるという教授の主張に対して、窓の外は玄関であるという主張に納得した。ってのが一つと、里を守るため。里の人が外に出ない限り安全を保証するって話もつけたから。ってのは

今岡秀雄 事実を知って血を認識してしまった

頼む くつ王と今岡の言ってること、賛成。貴族の後者、賛成。玄関説には納得してないんじゃない?頼之をとめるシーンで『まだ入り口と決まったわけではないぞ』と

貴族 そうだね

頼む えーと、自分で最後の話題をふっといてなんですけど、そろそろ締めますか?みなさん明日仕事でしょうから

くつ王 みなさん、お疲れさまでした。次回ハチワンダイバーでお会いしましょう!